事例紹介

夜の六本木に落とし穴:ドリンク・スパイキング

 
オーストラリアから旅行に来ていたS氏。
六本木のバーで飲酒していたところ、記憶があいまいに。気がついたら早朝の六本木の路上をフラフラと歩いていました。
警察官に呼び止められ、質問を受けているうちに、ポケットから見覚えのないビニールの小袋が出てきました。
警察署に連行され、尿検査をすると言われました。
信じられないことに尿からコカインの成分が出たと言われ、その場で逮捕されました。
 
S氏は母国では一流企業に勤務する立派な人物でした。
彼は激務の合間に年休を取って日本各地を旅行していました。
わざわざ日本で薬物を使用する理由はありませんでした。
S氏の話を聞くうちに、われわれは、これは近年六本木界隈で問題になっている「ドリンク・スパイキング」ではないかと考えました。
ドリンク・スパイキングとはバーで一人で飲んでいる客の飲み物に薬物を混入して意識を失わせその隙に現金や所持品を盗み取るという手口の犯罪です。
数年前からアメリカ大使館は六本木を訪れるアメリカ市民向けにドリンク・スパイキングの警告を発しています。S氏は深夜の六本木で数件はしごするうちに意識を失いました。
彼のバッグが荒らされ、クレジットカードがなくなっていました。
彼は犯罪者ではなく、犯罪被害者なのでした。
われわれは深夜の六本木に行って、彼の行動をなぞってみました。
するとたくさんの監視カメラを見つけることができました。
彼の供述を裏付ける画像が残っている可能性が高いと考えました。

 
われわれは様々な資料を添えた意見書を作成し、担当検事に面会しました。S氏は自ら薬物を使用したのではなく、ドリンク・スパイキングの被害者だと主張しました。
そして検事に、急いで監視カメラの画像を保全するように求めました。

 
S氏は釈放され不起訴となりました。
自由の身となった彼は2週間遅れで旅行の日程を消化して無事に母国に帰りました。

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