サラリーマンのSさん(46歳男性)は、仕事の疲れと会社の懇親会で飲んだお酒が原因で、会社帰りの満員電車のなかでウトウトしていました。突然見知らぬ女性に腕を掴まれて、「やめてください」と言われました。Sさんは自分は痴漢ではないと主張しましたが、迷惑防止条例違反で逮捕されてしまいました。警察官や検察官は、突然逮捕されて仕事のことや家族のことが心配で眠れないSさんに対して、手を変え品を変え執拗に自白を迫りました。Sさんは、痴漢をしていないと繰り返し主張しましたが、彼らの誘導に騙され、捜査官が作文したあいまいな供述調書にサインしてしまいました。そして、起訴されました。
わたしたちは、事件直後のSさんの手に、他の繊維は多数付着しているのに、「被害者」の女性の衣服の繊維は1本も発見されなかったという科学捜査研究所の鑑定を見つけました。女性が主張するように彼が手で彼女のお尻を撫で回したのであれば、Sさんの手に女性のスカートの繊維が付くはずです。繊維学の専門家に実験を依頼しました。実験の結果、Sさんの手に繊維が付いていなかったという状況が不自然であることが明らかになりました。
一審の裁判所は、それでも女性の証言を鵜呑みにして、Sさんを有罪としました。捜査官が作文した嘘の自白調書も信用できるとしました。しかし、控訴審の裁判所は、女性が酔って居眠りしているSさんを痴漢と勘違いした可能性があるとして、Sさんを無罪としました。捜査官が作文した嘘の自白調書も信用できないとしました。事件から約2年、Sさんは無罪を信じて戦い続け、名誉を回復することができました。