投稿日:2013年3月16日|カテゴリー:小松圭介
刑事被告人の手許には、起訴されるとすぐに、裁判所から起訴状という書類が届きます。起訴状は日本語で書かれています。裁判所は起訴状を被告人の母国語に翻訳してくれますが、これはあくまで「サービス」です。
昨今の裁判では公判前整理手続というものが開かれ、その冒頭で検察官が証明予定事実記載書というものを提出します。検察官は、証明予定事実記載書に記載した事実を立証することで被告人の有罪を証明します。一方、被告人と弁護人は、この事実について防御を尽くします。証明予定事実記載書は日本語で書かれています。検察庁は証明予定事実記載書を被告人の母国語に翻訳してくれません。翻訳の負担は被告人が負うことになります。
外国で刑事裁判を受けることを想像してみてください。自分の母国語で書かれていない書類を検察官から受け取って、読むことすらできない書類を基に防御の準備をすることを求められたとしたら、被告人は防御の機会を奪われているのではないでしょうか。検察官が被告人の有罪を主張立証しなければならないのに、検察官が被告人の有罪を主張立証するために作成した書類について被告人が翻訳の負担を負わされるとしたら、それは本末転倒ではないでしょうか。