法廷の反対側から

法廷の反対側から

投稿日:2011年9月4日|カテゴリー:趙誠峰

私は多くの刑事事件の弁護人をつとめています。被告人の冤罪が晴れるように、少しでも刑が軽くなるように弁護活動をしています。
ところで、先日、検察官席から刑事裁判に参加する機会がありました。私は刑事事件とともに医療過誤事件にも取り組んでいますが、「銀座眼科レーシック事件」の弁護団に参加しています。銀座眼科におけるレーシック手術で集団感染が起きた事件です。感染した被害者50数名を原告として、銀座眼科院長の溝口朝雄氏を被告に損害賠償請求訴訟を提起しています。それとともに、溝口氏が業務上過失傷害として起訴された刑事裁判に「被害者参加」をしています。
2008年12月から、刑事裁判に被害者が当事者として参加する「被害者参加制度」がスタートしています。刑事裁判は「被告人vs国家」の裁判ですが、そこに被害者も参加する制度です。
普段、刑事被告人の弁護をする立場からすれば、被害者参加制度は非常に難しい制度です。特に有罪・無罪を争う事件では、被告人は有罪判決が下されるまでは無罪が推定されます。したがって本来「被害者」など存在しないはずです。しかし、被害者参加制度があることによって、無罪が推定される被告人の法廷の中に「被害者」が存在することになります。これは非常に大きな問題です。
そういった問題はさておき、先日溝口朝雄氏の刑事裁判に被害者参加代理人として検察官席の隣に座る機会がありました。その日は溝口氏の被告人質問が行われ、被害者本人から直接溝口氏に対して質問がされました。事前に弁護士と質問内容等をしっかり準備して望んだので、非常に効果的な質問ができたのではないかと思います。その一方で、法廷内が被害者一色、全員で被告人を糾弾するような雰囲気に対して、この制度の恐ろしさ、威力をまざまざと感じさせられました。

刑事裁判はみんなで被告人を糾弾する場ではありません。
被害者参加制度のもとで、被告人をどのように弁護するのか、法廷の反対側からあらためてその難しさを実感しました。

2011-09-04 17:28 | 趙 誠峰
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