図1ベトナム国籍のチャンさん(仮名)は、妻と長年日本に住み、中古品の売買とベトナム料理店を営む会社を経営していました。妻がベトナムに帰国する際に、友人からベトナムに自転車を持って帰ってほしいと頼まれました。二人が羽田空港まで自転車を運んだところ、そこで逮捕されてしまいました。自転車は盗品でした。チャンさんは無実を訴えましたが、盗品等運搬の罪で起訴されました。
検察官は、彼が盗品の取引に関与していることを疑わせるような証拠を請求しました。私たちは、最高裁判所の判例に基づき悪性格立証は許されないことを主張し、証拠の採用に異議を述べました。その結果、検察官が証拠を撤回し、また、裁判所も証拠を却下しました。
公判では、私たちの主張を前提に、採用された証拠を一つずつ説明しました。事件に関係ない証拠は関係ないことを、事件に関係ある証拠はなぜそのような証拠が存在するかをそれぞれ説明しました。
逮捕から約2年かかりましたが、チャンさんの説明が受け入れられ、彼は自転車が盗品であることを知らなかったとして無罪になりました。検察官は控訴せず、一審で無罪が確定しました。二人はいまも仲良く日本で暮らしています。