外国と比較することによって、日本の特長や弱点が見えるということは往々にしてあることです。
たまたま本日(2014年5月8日)の日経新聞の「経済教室」に、役員報酬の構造改革を急げ、そうでないと、日本の何倍もの役員報酬を取っている欧米企業と伍していけない、という趣旨の小論が掲載されていました。いわく、現在の日本の役員報酬の制度はインセンティブに欠け、積極的な経営改革ができなくなっている、ということだそうです。私は、この意見に真っ向から反対するつもりはありません。しかし、例えばトヨタやコマツの役員の報酬を倍にしたとして、何か大きく変わるでしょうか。これらの企業は、世界の中で立派に競争できているし、成長阻害の要因が、役員報酬の構造にあるとは思えません。
この日経新聞の記事は、役員報酬のシステムだけを欧米と比較して、日本の制度の遅れを指摘していますが、もっと根本的な部分に違いがあるのではないでしょうか。それは、日本の役員が、サラリーマンの「あがり」という地位を占めていることです。つまり、日本企業の役員は、年功序列制度の果てにある姿と言えるのです。この日本の終身雇用、年功序列という労働法制を、欧米並みに変えて行くことが、根本的な解決に資するのではないでしょうか。企業の競争は、なにも役員だけでやっているのではありません。薄給だが辞めることもできず、企業の命令に従って海外赴任や単身赴任などを受け入れて黙々と努力している大勢の労働者が、日本の競争力を支えているのではないでしょうか。労働市場がもっと自由であれば、優秀な人材が適所を求めて自由に動き回るダイナミックな経済活動が可能になるのではないでしょうか。経営者も、大胆な選択と集中に取り組むことができるはずです。
例に使って申し訳ないのですが、オリンパスの不祥事は、自分たちの「先輩」役員が作ってしまった赤字を、「後輩」たちが延々と隠し続けていたのです。これは、役員報酬が欧米並みじゃないから起こった事件ではありません。赤字部門を切り捨てることもできないという事情に同情した後輩達が、先輩を否定することが出来なかったという、日本のサラリーマンの姿なのではないでしょうか。
日本の労働法制を、外国と比較することなしに、そのうわずみの役員法制だけをいじったところで、国際競争力はつかないと思いますがどうでしょうか。

2014-05-08 10:32 | 岩佐 政憲koma02