裁判員裁判の無罪率は職業裁判官だけの裁判の無罪率よりも少し低いという報道がありました。しかし、これは一般市民の方が職業裁判官よりも緩やかな基準で有罪を認定しているということを意味するものではありません。無罪率が減ったほとんど唯一の原因は、検察庁が組織的に裁判員対象事件の起訴件数を絞っているからです。『日本の論点2012』(文藝春秋社)にも書きましたが、いまや警察が殺人で逮捕して検察庁に送致した被疑者の4分の1しか殺人で起訴されません(裁判員法制定前は2分の1でした)。裁判員裁判対象事件の起訴件数は、制度発足前に予想された件数の3分の2以下です。東京地裁の刑事部の幾つかは廃部されました。この国の検察庁は、国会の制定した法律を組織のメンツを保つために自分たちに都合が良いように恣意的に運用しているのです。これは特捜検事による証拠の偽造よりもある意味で深刻な問題です。法の執行責任のある行政機関が、組織的にその責任を怠っているのですから。裁判所も弁護士会もこの由々しき事態に対して声を挙げません。難事件が減って仕事が楽になったからでしょうか?専門家がその責任を果たさないのであれば、一般市民が怒りの声を上げるしかないでしょう。

2012-05-14 21:58 | 高野 隆