例えば、あなたが外国に旅行したとします。あなたはその国の言葉を全く知りません。旅行のために、「こんにちは」「ありがとう」くらいは覚えてきました。そんな程度です。
その国のカフェでくつろいでいた時、隣のテーブルで喧嘩がありました。1人の男が同じテーブルの男を殴り倒して、逃げてしまいました。その後、警察官が2人やってきました。あなたはその2人から質問をされています。しかし、あなたは何を聞かれているのか、さっぱり分かりません。そうこうしているうちにパトカーに乗せられてしまいました。警察官は、署で事情を聞きたいようです。
警察での取調べには、日本語の通訳がいましたが、その通訳がヘタクソで、よく意味がわかりません。しかしどうやらあなたが犯人と疑われているらしいということは分かりました。あなたは、自分は犯人ではないと主張し、目撃した事実を説明しましたが、何度も同じことを聞かれます。相手が理解してくれているのか、よく分かりません。
そのうち、1通の書類を示されて、これに署名しろと言われました。しかし、その国の言葉で書かれているので、あなたには全く意味が分かりません。日本語の通訳人に説明を求めても、あなたの言った通りのことが書いてあるから、署名しなさい、としか説明してくれません。
さて、こんな状況で、あなたなら書類に署名をしますか?せめて、日本語訳を見せてくれ、と言うのではないでしょうか?
実は日本では、外国人の被疑者は、日本語の調書に署名をするように要求されます。書いてある日本語のニュアンス、意味合い、時には正確性についてすら、自分で確認できない書類に署名することを迫られるのです。
ある元検事が、「外国人とヤクザに人権はない」と先輩検事に教えられたと述べたことがありますが、あなたは、あなたの人権を認めないと言っているような国に、旅行したいと思いますか?

2011年10月13日 岩佐政憲